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「あ……くぅ」
「痛い?」
「……続け、ろ…」
「ん」
眉を寄せたまま腕の中で緩くしなる体を抱き直し、エドワードは潜らせた熱の在処を深く探った。 互いの指先を絡めてシーツに縫い止め、口付ける。
口蓋を舌先でなぞり、歯列の裏側までを丹念に探るのを、拒絶するのか受け入れるのか、彼の人は 苦しげに少し眉を寄せた。 ひらめく舌を追うように刺激してから、たっぷりと潤いを啜り、そして与えた。
こんなキスをするようになったのは、いつからだろう。 前は唇を重ねること、それがただ嬉しくて、夢中になって舌を絡ませるだけだった。
触れた掌は固く、骨張った指が余計に相手の存在を知らしめた。
「大佐」
差し込んだ自身が柔らかな粘膜に包まれているのを感じた。 ロイの浅い呼吸に合わせて、その場所はエドワードをじわりと締め付けては解れる。
「大佐…」
唇を解放して一呼吸おくと、エドワードは組み敷いたロイの肩口に、そっと顔を伏せた。 うなじから立ち上る清涼感のある香りは、きっと彼が普段使っている石鹸のものだろう。 そしてその中からほんの少し、欲情した雄の臭いがした。
決して抱き心地が良いとは言えない、体。懐かしいような、違和感のあるような、不思議な感覚に 包まれるのはどうしてだろうかと自問する。
思い出すのは、熱を奪う金属の感覚。
こうやって、アルの鎧の体に凭れることがある。
頬を鋼鉄の鎧に寄せると、じいんとした冷たい感覚が、それでも酷く嬉しくて、長い時間をずっと そうやって過ごしたこともある。
アルの鎧の体を、だが嬉しいと思うのだ。
彼を、弟を失わずに済んだと、実感できるから。
そうしていると、彼の体温こそないけれど、不思議な安堵感に包まれるから。
でもそれは、決してアルフォンスには告げられない。 二人で元の体を取り戻そうと、後ろを振り向かないと誓ったから。
「鋼の?」
ロイは、最初に少し腰を揺らめかせたものの、その後は自分を抱きしめたまま動かなくなった エドワードに、声をかけた。
「このままさ」
「何だ」
いつもの彼と違って、伺い見るような言葉の調子に、ロイは不審気に問いかけた。
「このまま眠りたいんだけど」
「馬鹿者」
予想に違わず、一言の元はねつけるような言葉が返ってきて、思わずくすりと笑いが零れる。
「…だよな」
「…馬鹿者」
絡めた指先をやんわりと解かれ、エドワードは顔をあげた。
「一体私をなんだと思って居るんだ」
呆れた声のまま、それでも延ばされた彼の指先は。
エドワードの髪留めを奪いさり、まとめるものを失った金髪が重力に従って解れるのを、指で梳いて 助けた。
さらさらと、流れる髪の束。
その一部はエドワードの頭越しにロイへとふりかかる。 覗いた顔は、何故かひどく嬉しそうで。 エドワードはどうしていいのか分からずに、ただ戸惑いを顔に浮かべた。
「責任は、とってもらうからな」
「何だよ責任って」
「少しだけだぞ」
そして抱きしめられる、体。 後頭部に回された手の力は意外と強くて、無理矢理に押さえつけているわけではないのに エドワードはさっきよりもロイの肩に、深く顔を埋めることになった。
背中に回された腕も、エドワードの体をしっかりと抱き込んでいる。
「ちょ、…大佐っ」
「いいからじっとしていろ」
「………」
頭を押さえられ、顔を上げられない姿勢のエドワードは、もう一度さっきのロイの表情のことを 考えていた。
どうして彼が、こんな嬉しそうなのか。
そして、自分の中に生まれた、落ち着かない胸騒ぎ。
重ねた体からは、確かに彼の体温と、鼓動を感じるのに。
ほっとするような、いたたまれないような不思議な気持ちは、エドワードの胸中をじんわりと浸していく。
さっきよりもずっと、ざわざわとしたものが強くなって、エドワードは押さえつける手をはね除けるように 勢いよく顔をあげた。
「どうした、鋼の」
「……がうんだって」
「何だ」
「違うんだってば」
オレはアンタとこんなことがしたいんじゃない。
「………」
見下ろしたロイの顔は、何故か笑いを抑えきれないような表情で。
「知っていたよ、鋼の」
「なっ……」
それを目にするや否や、一瞬にして頬が紅潮するのが、自分でも分かる。
「うるせーよ大佐」
今にそんな口、叩けなくしてやるから。
そして彼の手から、赤い髪留めを取り戻し、乱れた髪を手早く一つに纏める。
「邪魔だろ」
「ああ、そうだな」
彼の中に差し込んだ状態の欲に、一気に熱が集まった。
「覚悟しろよ」
じわり、と締め付ける内側を、更に深く求める。 ぐるりと腰を押しつけるようにして刺激すると、ロイの体が小さく跳ねた。
開かせた足の内側、大腿の滑らかな部分に、鋼の掌を滑らせる。
「あっ」
エドワードを呑み込んだ部分がきつく収縮して、粘膜の擦れる音がする。 掬うようにロイの熱を辿って刺激すると、あっけないほどに先端が潤みだした。 そのまま強く扱くと、容易く彼は熱を解放する。
エドワードもそれを追うように、深くロイの中、欲を放った。
「私がしてやろうか」
簡単に纏めただけの髪を結い直す仕草を見て、ロイが声をかける。
「いや」
これはオレがやることだから。 誰にも任せられねーんだ。
慣れた手つきが髪を結う。 最後に赤い髪留めをつけて、ゆっくりと伸びをした。
「さあてと、そろそろ行くかな」 アルも待ってるだろうし。
立ち上がったエドワードは、笑って振り返った。
「じゃあな、大佐」
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みつあみ、って言葉を出さずに書いてみよう!ってのが自分テーマでした。 エドにとってのみつあみっていうのは、サラリーマンにとってのネクタイというか、そんな感じ。
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