*にわかあめ 〜after R18
※2011夏コミ発行「にわかあめ」のその後です。
例によって例の如く、そのシーンしかありませんので、ご注意ください。
「大佐、だいじょ……ぶかよ…?」
気遣わしげに掛けられる声に頷く事も出来ず、ロイは腹の奥底に堪えていた息をまとめて吐き出した。
熱の塊となって漏れた息に、苦しげな声が混じる。
それを耳ざとく聞きとがめたエドワードは、腕の下に組み敷いた身体を労るように、幾度かその肩を撫でさすった。
会うことすら数年ぶりで、勿論その間ロイはエドワード以外と肌を重ねた―――ましてやこのように誰かを受け入
れたこともなく、丹念に解されたからと言って、本来その機能を備えていない場所を明け渡す事への緊張が、完
全に取れるわけもなかった。
強ばった四肢を叱咤し力を抜こうと意識するも、ぐ、と押し込まれて拓かれれば、その圧迫感に腰が逃げるのを制
御する術は無い。
片足を抱えられ、向き合う姿勢なのも拙かった。
ふと瞼を開ければ、余りにも真摯な眼差しの青年と目が合ってしまうのだ。
自分がどんな表情をしているのか、どのように彼には見えているのか想像するだに恐ろしく、懸命に首をよじって
顔を逸らそうと試みる。
いっそ両手で顔を覆ってしまえればいいのだろうが、身体を襲う違和感にどこかに爪を立てていなければ、とうて
い堪えきれないような声が出てしまいそうで、それも出来ない。
「うぁ―――ッ、ふ、………」
再びぐ、とエドワードが体を進め、こじ開けられる感覚にロイが呻きにも似たそれを漏らした。
苦痛だけならば耐える自信があった。
かつて初めてエドワードと体を重ねたときでさえ、このような失態は晒していない。
切り裂かれるような痛みをやり過ごし、血の気の引いた、それでも辛うじて微笑み少年を抱きしめることが出来ていた。
けれど今回はどうだろうか。
ぴったりと己に重なる青年の手足。
与えられる口づけと愛撫は、もはやくすぐったいだけではなく、確実にロイの体に火を点していった。
愛おしいと、素直にそう思う。
懸命に背伸びをしていた少年が、自身と変わらぬ背丈になり、それでもやはり背伸びするのだ。
とっくにロイの背中など追い越してしまっているのに、置いていかないで欲しいと腕を伸ばす。
見違えるほどに眩しくなった姿に、変わらない真摯な瞳と熱を感じて、ロイの中に潜む何かがぞわりと頭をもたげる。
欲だ、とロイはそれを定義づけていた。
己のエゴだと、理解している。
もはや彼は庇護すべき対象ではなくなり、遙か未来を見据えて飛び立つ立派な翼を身につけていた。
今はロイがその姿に惹かれている。
他の誰でもない、己が手に収めたいと望み、欲する心を、懸命に制御しなければいけないほどに。
彼の光は彼だけのもので、決して自分などが閉じ込めていいわけもなく。
抱きしめる強さで引き寄せたくなる手を、どうにかシーツに遊ばせてロイは唇を噛んだ。
「ごめん、もう無理―――」
その時切羽詰まった声が頭上から降ってきて、思わずロイは目を見開いた。
と同時にずし、と体の奥底にかかった重みが、ロイの全身を震わせる。
「ァアア…………っ、」
最奥までを、焦れた青年が一息に進んだのだ。
目の裏が真っ赤になる。
と同時に今までと比較にならないくらいの圧迫感が襲い、ロイはシーツを掴んで身をよじった。
ベッドから肩が浮き、上半身が跳ね上がる。
「たいさ、………――大佐!」
髪の一筋までが、びりびりとした緊張に震える。
心配げに掛けられる声に応えることも出来ず、ロイは息を止めて体を強ばらせた。
「おい、大佐、ダメだってば!息しないと――」
ぽたり、と腹に濡れたものが落ちるのが分かる。
ああ、私はいってしまったんだな、とまるで他人事のように考えて、ロイの焦点を結ばない目は、うつろに天井を映す。
「おい、大佐ってば!」
視界に何かが覆い被さり、口が塞がれた。
何だ――と考える暇もなく、空気が強い勢いで吹き込まれた。
きゅうと縮んでいた肺が、与えられた酸素に勢い込んで広がった。
「――げほッ、」
喉の奥から何かがせり上げてきて、ロイは上半身を丸めるようにして咳き込んだ。
肺だけでなく、胃までもがきりきりと痛むようだ。
ひとしきり噎せ返ったあと、涙でにじんだ目を開く。
「ごめん、大佐。無茶しちまって、俺……」
項垂れた青年が、眉尻を下げてロイの顔を心配そうに覗き込んでいた。
丸めた尻尾までが見えそうなほど落ち込んだ様子に、堪えきれず小さく吹き出す。
「ふっ、」
「な、ンだよ!人がせっかく真面目に謝ってんのに!」
顔を真っ赤にした青年が、まるで昔のままに唇を尖らせた。
その子どもっぽい様子が可笑しくて、愛しくて、ロイは手を伸ばしてエドワードの前髪に触れた。
「だが、続きを止める気はないのだろう?」
ロイの中に未だその存在を主張し続ける強ばりを指して言うと、これ以上はないと思っていた青年の頬の赤みが、
更に増した。
「………ごめん、でも、もう――」
「構わない。私も限界だ」
「え」
意味を察しかねて驚いたように見開かれた目が、ロイを映す。
くすり、と微笑んでロイは伸ばした掌で青年の頬を包んだ。
自分から体を持ち上げて、その唇にキスをする。
もう片方の腕で深い傷跡の残る肩を抱きしめると、何かを堪えるように眉を寄せたエドワードが、ロイの体を抱きすくめた。
「大佐、たいさ……!」
貪るように口づけて、エドワードが再びロイの体をベッドへ押しつけた。
左足を抱えられ折り曲げられると、エドワードを受け入れたままの腰が浮き上がった。
叩きつけるような勢いで青年が律動を始めると、一度達した自身に再び熱が宿るのをロイは感じた。
浮き上がった腰が不安定に揺れる度、青年との繋がりが解けそうになる。
それを止めようとエドワードの腰に足を絡めると、中を擦り上げる動きがより鮮明に感じられて、ロイは噛みしめた唇から
漏れ出る声を、もはや自身ではコントロールできなくなっていた。
「ぁあ、く………、ん――」
エドワードの指が、ロイの腹に散った白濁を掬い上げた。
どうするのだろうとうつろな眼差しで見ていると、彼はそれを繋がった場所へと塗り込めるようにした。
「止せッ、……はがね、の……あ、ァアっ」
いっぱいに青年を受け入れて広がっている場所へ触れられると、きゅうと全身が痺れるようになる。
丁度引き抜かれた時に捲れ上がった襞へと塗りつけられて、ロイはいたたまれなさに身をよじった。
「すご―――大佐の、なかが、すごい締め付けて」
「い、………や、め―――もう、」
水分を与えられた場所は、青年が突き入れる度に湿った音を響かせるようになった。
ぐしゅぐしゅと耳を汚すそれも、ロイの感覚をひときわ鋭敏にさせる。
閉じた奥を押し開いて突き上げ、捏ね回すように探られれば、もはやロイの制止の言葉は意味を成さない声となって
溢れるだけだった。
やがて上下の感覚すら失い、目の前の肩にしっかりと掴まることで辛うじて自失せずにいられるほど、ロイはエドワー
ドに翻弄された。
だが翻弄されているのはエドワードも同じで、抱きしめているのか抱きしめられているのかわからないほど一つに融け
合って、頂点を知らないように体温は上昇を始める。
「たいさ―――」
ただ相手の名を唇に浮かべると、ロイがひどく綺麗に微笑むものだから、エドワードは切ないような苦しいような思いの
まま、その中に熱を解いた。
殆ど同時に達したロイは、青年の心地よい声を耳にしながら、するりと意識を手放した。
自分を呼ぶ声の抑揚、その温度。
全てが愛しいと、抱きしめたいと願いながら。